地獄の果てでもDTM

優しくなれよ。俺もなるから。

すべての挫折系初心者DTMerへ

4年前に書いていたブログを見返していた。

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当時の俺も、作った曲をYoutubeに公開していたらしい。しかしリンク先の動画は全て削除済みであった。

当時はまじで金欠だった。上京を考えていたのだがルームシェアするはずであった友人が実は専門学校の寮に入るのだと知り、おいおい話が全然ちげーじゃねーかと困惑した後、俺は東京へは行かずに、ネットで稼ぐ方法を模索する日々を始めた。

生活の方はというと散々だった。クラウドワークスでノルマ2000文字の記事を600円で請け負う日々を1か月ほど過ごした。バイトにも入ったが「鬱だ」と思いながらやっていた結果まじで鬱っぽくなった上に、短時間しか入ってなかったため、その月の19日になる頃には40円くらいしか財布に入ってなかったりした。

 

このころから既に作曲もしていたのだが、自分のためにしか作っていなかったというか、使い手・聞き手のことを二の次に考えていた。

 

作曲を続けていて思うのは、作曲における成長や方向性には「断定できる方針などない」ということだ。

職人気質な職業作曲家と、人気商売的な有名作曲家は違うのだ。

それぞれ必要な技術は全く違う。

使うエフェクトの深さも、ハイハットのパターンも、話題作を作ろうとすればするほど、それらの選択肢は限定されていく。しかし目指すスタイル次第では、選択肢はいくらでも広げられる。アートとして完結する分には、キック一個とベースのみで作れるのだ。世の言う「自由」という言葉が持つ"見えない手錠"はここに隠されている。自由に与えられた選択肢を俺たちが隅から隅まで眺めている間に、「人を集められる要素」を知っている連中や、「流行を操作できる技」を持つメディアの連中は、限られた選択肢のみをさっさと決めて持って帰ることが出来る。なぜなら彼らは市場で稼ぐ現役のプロだからである。豪勢で華やかな世界を見たことが無い俺たちアマ作曲家は、自己PRをゼロから始める。文字通り、裸の状態でスタートするわけだ。当然、俺たちは無限にある選択肢の中から、何を選べばよいのか分からなかった。この時点で、残酷なまでに差があるのだ。

辛いが、そういうことなのだ。

 

全初心者DTMerに知ってほしいのは、作曲を本気でやればやるほど、市場と供給側の間にある溝を、嫌というほど見ることになるということだ。

趣味でやる分には一切問題ない。しかし「少しでも多くの人に評価されたい」と思い始めると、DTM界隈は地獄と化す。

こういう経験はないだろうか。

"曲のクオリティが低いにもかかわらず、フォロワーが多かったりPVが多いDTMerがいた。"

アマの世界では、自分で自分を売り込むことが上手い人間でなければ人は集められない。それは、曲のクオリティとはイコールではない。たとえガサツな打ち込みでも、たとえ前衛的なコード進行でも、自分の個性を持ち活かす人間ならばPVはメキメキ上がってゆく。

人が興味を持つものは人であるので至極当然である。しかしもう一つ原因として挙げられるのは、音楽は目に見えないコンテンツであるから、ということだ。

 

例えばイラストレーターになりたいといった場合はどうだろうか。視覚に訴えかける分、まだ選択肢は活きる。たとえそれがマニアックな部類であっても、目に見える物であれば見た人は磨かれた箇所を査定し評価できる。動画制作者ならどうだろうか。ウェブデザイナーは?パフォーマーは?同じである。目に見えるのだから、洗礼されたパーツは人を魅了する。

当然ながら、それだけで食おうと思ったら自己PRに全力を注ぐ必要がある。しかし目に見える物は、それだけで強いのだ。なぜならそこに作り手の人間味が宿るためである。こだわりや繊細さなどは、きちんと人間の目に見えるのだ。

 

一方、音楽はどうだろうか。

あなたは曲を聴くとき、コード進行を読みながら聞いているだろうか。

使われているコンプのスレッショルドを確認しながら聞いているだろうか。

Youtubeから違法DLしてEQバランスを逐一確認するか?

違うよね。

ならば何を見ているのか。何も見ていない、という訳ではない。情報は光のように拡散し、視認することが難しくなったとしても、聞き手は散りばめられた情報を集めようと努力してくれる。

人は曲を聴くとき、見るものが何もなくても、作った人間をちゃんと見ようとしているのだ。作った人間がどういう人なのかを想像するために、想像に必要な情報をMVやライブパフォーマンスなどから収集し、瞬時に脳内で処理し、共感し、ハマるのだ。

冷たい言い方をすると、あなたの曲は見られていないのだ。見えないのだから。

たとえ細かいベロシティの調整をしていようと、関係ない。見えない。

一般的な視点から客観的に見ると、皆、曲を作った人間を見ているのだ。

全く聞かれないDTMerの作った曲は、つまり俺やあなたの曲からは、作った人間がどういう人なのかが一切見えてこないのだ。なぜならあなたは正体を隠しているのだから。素性を隠し、個性をも隠しているため、聞いていても興味が持たれないのだ。

 

見ようとしてくれているのだから、見せれば良い。

俺たちDTMerは、もっと自分を見せる工夫をしていくべきなのだと思う。

繰り返しになるがそれは曲だけでは難しい。音楽は見えないので、聞き手に情報収集させる労力を増やしてしまう。もっと目に見える物をちゃんと使うべきである。MVだろうがブログだろうが詩であろうが、何でも良いので自分を見せていくことが大切である。

 

俺はいまだに音楽での爆発的なヒットなんてもちろん無いし、動画はバズってすらいない。なので偉そうに書く資格などない。しかし、もしあなたが「もっと人に聞いてほしい」「せめて少しは有名になりたい」と思っていて、それがあなたの生活の充実度に繋がると確信しているなら、自分を見せていくことをお勧めする。